宇宙の魅力は人それぞれ。彼らは一体どこに宇宙の魅力を感じ、これまで宇宙から何を得たのだろうか。ワタシはど
んな宇宙が好きで、何をしたら一体どう変わるんだろうか。
Noti'sメンバーによる直撃インタビュー取材。不定期更新。宇宙に魅了された同世代の学生たち。彼らが培ったその世界観に、アナタも魅了されるに違いない。
宇宙の知識を用い
将来の芽を育てる!
UNISON代表/SGAC学生代表
慶應義塾大学理工学研究科 理工学研究科開放環境科学専攻
修士1年生
小西 隆介
インタビュワー:島田(2013年取材)
※学年は取材当時のものです
1.UNISECについて
◆UNISECとは?
大学宇宙工学コンソーシアム(University Space Engineering Consortium, UNISEC)は、大学・高専学生による手作り衛星(超小型衛星)や缶サット(超小型の模擬人工衛星)、ロケットなど宇宙工学の分野で、”実践的な”教育活動の実現を支援することを目的とする特定非営利活動法人(NPO)です。 2002年4月に「大学衛星コンソーシアム」と「ハイブリッドロケットグループ」を統合しUNISECを設立し、現在は40大学・高専から58団体が参加し、学生会員は600名を超えています。 また最近は海外にも拠点を置いている国際的な組織です。
◆小西さんの役職を教えて下さい
UNISECの中に学生で運営されているUNISON (UNISEC Student Organization) という組織があるのですが、その組織の代表と、UNISECの学生理事をしています。UNISONにはCansat、衛星、ロケット、GSN (Ground Station Network)、交流、広報の5つのワーキンググループ (WG) があり、そのWGで分野横断的な活動も行われています。私は主にCanSat WGに携わっていますが、他にロケット、衛星WGから学生代表が選出されています。
(以下参考資料)
◆UNISECの活動内容を教えて下さい。
以下は活動のおおまかな概要なのですが、 ・宇宙機関等からの研究開発資金の分配 ・宇宙機器・メーカー等からの技術支援窓口 ・周波数獲得・法的問題への共同での取り組み ・安全問題への共同での取り組み ・打上げ機会の探査 ・メンバー大学・高専の技術交流、共同開発、共同購入 ・シンポジウム・ワークショップ・セミナーの開催・学会派遣 ・地域との交流事業、アウトリーチ活動 以上の様なことを行っています。
◆学生代表として今後の方針を教えて下さい。
大きく以下の3つです。(UNISONの代表紹介記事参照)
1.UNISECの広報活動強化
近年のUNISECが行うアウトリーチ活動が、『内向き』になっているように感じます。『内向き』のアウトリーチ活動とは、対象が「宇宙に元から興味のある人」や「宇宙イベントに参加した人」の活動です。このような活動は、対象を絞り効果的な広報活動を行うという点では有意義であると思います。しかし、私たちの広報活動は、「宇宙に興味のない人」を「宇宙に興味のある人」にする、というステージに来ていると思います。例えば、女子高生、スーパーに通う主婦の方々などです。 このような人たちが宇宙開発に興味を持ち、宇宙開発を応援してくれるような環境を作ることが出来れば、日本の宇宙開発は飛躍的に発展していくと思っています。このようなアウトリーチ活動を牽引できるのは、豊富な実績と人材を持つUNISECであると私は信じています。 また、海外に対して十分な広報活動を行えていないのも事実である。これもまた、『内向き』であると言える。世界に対しても『外向き』な、国際的な広報活動を行いたい。それが結果的に、ARLISSの国際化や世界の宇宙開発に挑戦する同じ仲間たちとの交流に繋がれば、と思います。
2.UNICORN-2の開発
2012年度、UNISECの有志のメンバーが集まり、1機のCansatが製作されました。ARLISS2012で打ち上げられたUNICORN-1は、Cansatに掛かる加速度を測定するという難しいミッションを見事に達成しました。これは、今後のUNISEC有志によるCansat製作のモデルケースになると思われます。これまではCansat開発に挑戦することに少しのハードルがありましたが、UNICORN-1の成功により、多くの学生がCansat開発に関わるための門戸が開かれたといえます。これはまさに、これまでの10年間で育まれた大きな芽吹きの1つです。 この活動を次年度、またそれ以降に繋げていくためにも、そしてより多くの人にとってCansatを身近にするためにも、UNICORN-2の製作・ミッション成功を実現したいです。
3.AXELSPACE CUP -CanSat Challenge Contest-の開催と成功
現在、カムバックコンペティションとミッションコンペティション以外に、SPindleの取り組みとして新たなコンテストがUNISASの方々から提案されようとしています。 ARLISS2013から始まるこのコンテストは、これまでにない宇宙教育プログラムであり、非常に魅力的です。先輩たちと協力しながら、なおかつ自分たちに出来る最大限の努力をしながら、このコンテストの実現と成功に向けて努力したいです。 これまでの10年間で先輩たちがチャレンジし続けてきた、開拓してきた「カムバック」という枠組みを超えて、Cansatプログラムに新たなイノベーションを起こす事が最大の目標です。
◆いま宇宙を舞台にいろいろやられていますが、そもそも宇宙に興味を持ったきっかけって何ですか?
宇宙に興味をもったのは大学に入学する直前です。 もともと建築に興味があり、大学でも建築のことを勉強する予定でした。しかし、建築分野で働いていた祖父から建築以外の勉強をすることを勧められ、進路を再設定することになりました。そこで、何か面白い科学分野がないか探していたところ、当時ナノと宇宙とバイオの3つが流行っていたのですが、その中で宇宙が一番かっこいいと思い、大学で宇宙工学の勉強ができる慶應義塾大学システムデザイン工学科(特に現在所属する高橋研究室)に進学を決めました。 入り口は「なんとなくかっこいい」くらいのレベルで、小学生のときから天文や衛星に興味がある、というわけではないんです笑
◆宇宙で興味がある分野はありますか?
宇宙教育ですかね。 私は今の日本の宇宙開発にはあまり納得していません。 宇宙開発に膨大なお金を使うくらいなら震災などの復興にお金を使ったほうが良いのではと思うことがあります。 そういう思いもあり、お金かけずに出来ることは何かと考えた時に、アプリケーションの部分だと思ったんです。つまり今あるものを使うこと。 私は、宇宙の知識を用い、将来の芽を育てることがいま自分が一番やるべきことだと思っています。
担当:島田英裕
誰もやっていないこと
だから面白い!
大阪府立大学工学研究科
別所 昂
先日、大阪府立大学の別所昂様にお話を伺ってきました。
インタビュアー:島田(2012年取材)
◆名前と所属を教えて下さい
別所昂です。大阪府立大学工学研究科航空宇宙海洋系専攻修士2回生。
◆海洋系専攻?
宇宙海洋系の中の航空宇宙分野に所属しています。海洋とありますが、海洋の事はまったくやってないです。
◆役職を教えて下さい。
大阪府立大学工学研究科の中の小型宇宙機システム研究センター(以降SSSRC)の中で、主に学生で衛星を作っているのですが、私はOPUSATプロジェクトのプロジェクトマネージャーをやっています。またSSSRCの学生代表もやっています。
◆SSSRCについて教えて下さい。
SSSRCはロケット・衛星(缶サットなど)、宇宙に関するものづくりをして、学生が成長する場所です。設立のきっかけに「まいど一号」があります。(まいど一号は大阪府立大学とJAXA、東大阪の工場の人達が連携して打ち上げた衛星)
具体的に、その技術・ノウハウを蓄積してそれを繋いでいこうというのが背景にあります。
◆メンバーは何人くらいいるのですか?
二年生までは30人。あとは、一年生がどれだけ入るかです。
◆活動場所を教えて下さい。
活動場所は、航空宇宙工学分野の学生が授業を受けているA9の棟の下の部屋でやっています。衛星の運用をする管制室と、作業部屋の2部屋あります。
◆SSSRCの最近の活動を教えて下さい。
SSSRCでは、人工衛星・ロケット・一年生の技術教育の3つのプロジェクトをやっています。
◆3つの活動でそれぞれのこれからの目標を教えて下さい。
まず初めに、衛星はいまブレットボードモデルをやっています(以下BBM)。人工衛星は3つの段階に分かれています(ブレットボードモデル・エンジニアリングモデル・フライトモデル)。
BBMは技術要素の基本機能を達成する段階で、それを人工衛星の形に組み込んでいくのが、エンジニアリングモデルです(以降EM)。宇宙仕様に変えたものがフライトモデルです(以降FM)。
昨年でやっとBBMが終わり、これからエンジニアリングモデルを作っていきます。
具体的には5月16日にJAXAと設計審査会があり、それからEMを作っていきます。
それがこれからの目標です。
ロケットはあまり関わっていないのですが、能代宇宙イベント(秋田県の能代市であるロケットを打ち上げる宇宙のイベント)で打ち上げるのを目標に頑張っています。
一年生の教育は、前期にプログラミング、回路、後期は年度末の種子島ロケットコンテストに参加することを目標に、CanSat作りをおこなっていきます。
◆衛星のPMをやられてますが、苦労した点や大変だった点を教えて下さい。
団体活動全部に共通することだと思うのですが、十人十色なのでその一人一人がどのように考えているのかを考えないといけません。自分とは違う人間なので完全に知ることはできないですけど、普段からよく観察したり接することでもっと内側にあるバックグラウンドを探らないと、ミーティングで何かを決める時に議論が上手かないことが多いのです。なので、そこは苦労しました。
◆PMのやりがいを教えて下さい。
一言でいうと、「誰も自分と同じ経験をしていないだろう」という事です。PMをやらないと、これだけ人の観察をしないといけないと思った事はなかったと思います。これはやってみないと分かりません。あとは、単純にものが出来あがってくるのが嬉しいです。
◆衛星プロジェクトの最終目標を教えて下さい。
まず、将来像は常にそれがいいなと思うものでないといけません。
今のプロジェクトでやっている人工衛星の機能・技術は会社とかと比べると劣るものが多いですが、ただ、だからやる意味がないかと言われると、意味はあると思っています。小さい=大きいものに劣っているという意味ではなく、小さいからこそ複雑なシステムを全て把握することが出来るのではないかと思います。そういうイメージは凄く大事で、将来会社に入ってもっと複雑なシステムをつくる一角を担った時に、今までやってきた小さい規模のシステムがやってきたイメージを持っているので、自分はどういう部分を持っているかの理解に繋がります。
なので団体としていまやっていることはすごく有意義です。将来は、これから入ってくる人も同じような技術・ノウハウ・経験ができるように続けていきたいです。何を作るかというのはそれを実現するものであったらいいので、いまは人工衛星でそういうものが得られているのですが、将来的に別のものであってもいいと思っています。とにかく得られるものを大事にしていきたいです。
◆いま宇宙を舞台にいろいろやられていますが、そもそも宇宙に興味を持ったきっかけって何ですか?
実は宇宙の本を読んだとか宇宙がすごく好きだったとかそういう経験がなくて、ロボコン(ロボットコンテスト)をやってた時にまいど一号のプロジェクトの関係者の方に誘われたのがきっかけです。
それから人工衛星をやり始めました。その時は自分みたいな普通な人間が人工衛星をやるといったことに不安や疑問がありました。でもやってみると、全然違っていてもっと自分の力で何かできるのではないかと感じたので、そこからやり続けています。なので自分の軸に「面白いことがやりたい」、「誰もやってないことをやりたい」というのがあり、
宇宙はまさにそのフィールドだったという事です。
◆今後の目標・夢を教えて下さい。
PMは「他の人では経験できない」と言いましたが、それが生かせる職業に就きたいと思っています。何か目標を一つ作ってそこに向かって頑張っている団体というのは、何かしら一つ以上問題が出てきます。私は、その課題を見つけたり、改善したりというのをずっと取り組んできたので、そういう事をやっていきたいです。それが宇宙ならすごく魅力的です。1人では達成できないことを達成するのが、プロジェクトだと思うのでそういう活動をこれからも続けていきたいです。
◆いま就活をやられていますが、する前と後の宇宙業界のイメージのギャップというのがあれば教えて下さい。
他の人と比べるとそこまでギャップはなかったです。ただ、今まで私は人工衛星は、「作りたいから作る」、「必要だから作る」のだと思っていました。実はそうではなく、必要な所に売る。
というビジネス的な要素があることにギャップを感じました。
◆最後に、学生に一言お願いします。
その人が何をやるかは置いといて、宇宙に限らずいえるのですが、何でそれが必要なのか何で自分の今の行動が必要なのかというのを考えてやったら良いと思います。自分の活動自体に自信をつけるために、周囲から求められていることといま自分ができることを整理して、実際の活動に繋げていくことが重要だと思います。
「叶わないことはありません!」
今の活動を一生懸命頑張っていって下さい。
写真左:島田 右:別所様